関東大会、青学VS氷帝。珍しく行われた、補欠同士の『第六試合』。
・・・・・・・・・その映像を見て、私はまた涙を流した。・・・何回見ても、泣けるよね!!でも、その度に違う理由で泣いてる気がする。この試合(ダブルス2〜シングルス1も含め)にはストーリーが多すぎて、いろんな角度から見ることができるから。
「おい、。」
「ひゃっ!日吉・・・?!」
私は慌てて、映像を停止した。たしかに、今は部活中。こうして、部員の誰かに呼ばれることは当然だ。でも、それが選りにも選って、日吉だなんて・・・。
「・・・何してたんだ?」
「な、何でもないよ!部室の整頓!ところで、どうしたの?」
まだ日吉の方を向いていなかった私は、急いで涙を拭き、ようやく後ろを振り返った。
「・・・・・・・・・・・・、どうしたんだ?」
「え?何が・・・?」
「目が赤い。」
・・・・・・しまった!涙を拭いても、目の充血までは治せてなかった・・・!
「え、え〜っと・・・、これは・・・。部室の整頓をしてるから、埃とかで赤くなったんじゃないかな?」
「お前・・・・・・。」
呆れたように少しため息を吐いた日吉。・・・もしかして・・・・・・、バレちゃったのかな?
そう思って、私は慌てて、言い訳を考えていた。それなのに・・・。
「埃が出ることぐらい、掃除する前からわかるだろ。マスクするなり、多少の用意をしてから整頓しろよ。」
たしかに、今の私は普段のジャージ姿。でも、いつもは多少準備するよ。ただ、今回は、整頓って言っても、今までの試合の映像をチェックしてただけだし。そんなことする必要なかったんだもん。
というのが事実だけれど。一旦、嘘を吐いてしまっているのだから、そんなことも言えず。それに、日吉も心配して言ってくれてるんだってわかったから、素直に聞き入れることにした。
「はい、すみません・・・。」
「俺に謝ったって意味は無い。」
「はい・・・。」
それにしても・・・相変わらず、言い方がきつい。もうちょっと優しく言えないの?!さっきまで見ていた試合に負けて泣き崩れていた姿は、まるで別人のようだ。
・・・でも、それでいいんだ。日吉のあんな姿は見たくないもの。どんなに生意気で、憎たらしくても、日吉は笑っている方がいいんだ。
そのために、頑張ってる日吉を私はできるだけ支えていこう。
「そんな風に悄気ている暇があるなら、さっさと準備したらどうだ?」
とは思ってるんだけど・・・。さすがに、日吉も酷くない?私は、日吉のために泣いて、日吉のために頑張ろうって思って・・・・・・・・・いや、まぁ、私が勝手にそうしてるだけなんだけどね。
それでも・・・、そんな言い方ってないじゃない!
「わかってます!やればいいんでしょ、やれば!」
「あぁ、やればいいんだよ。」
また、嫌味な笑みを浮かべて、日吉はそう言った。
もう・・・、なんで日吉はこうなのかな!・・・・・・・・・そんな日吉が好きなのは、この私だけどさ!でも、そんな所ばっかりじゃないから、好きなわけで!そんな言われ方されたら、どんなに好きでも、ちょっとぐらいイラッとするの!
「日吉こそ、早く練習に戻ったら?何しに来たのか、知らないけど。」
「俺は跡部部長に言われて、お前の様子を見に来ただけだ。」
「跡部部長に・・・?もしかして、何か用事でも・・・?!」
「いや。お前を見かけないから、ちゃんと部室に居るのか確認して来いって。」
「あぁ、そうだったんだー・・・。うん、ここに居ますって伝えておいて。で、何かあったら、すぐに言ってくださいって。」
「わかってる。それじゃ、部室の整頓頼んだぞ。」
「あ、うん。・・・ありがとう。日吉も練習頑張ってね。」
さっきまで、あんなに冷たかったのに。頼んだ、なんて言われたら、単純な私は嬉しくなってしまった。だから、機嫌を直して、笑顔で日吉を送り出した。・・・・・・のに。
「先に、自分の格好を準備してから、整頓しろよ。」
なんて、また意地悪く言ってきた。
「わかってるってば!」
私が向きになって言い返すと、日吉はまた嬉しそうに笑っていた。・・・・・・性格、悪い。
そう思いながら、日吉の後ろ姿を見ていると、日吉がドアの前で、また振り返った。・・・今度は何?!
「それから。・・・・・・・・・何かあったのなら、ちゃんと言えよ?」
「・・・?」
「整頓途中で、部室があんなに綺麗なわけはないってことだ。」
「!!」
「今はもう元気そうだが・・・・・・がよければ、話ぐらい俺が聞いてやるから。じゃあな。」
最後の最後に、優しく微笑んで、日吉は部室から出て行った。
・・・・・・・・・何だ、バレてたんだ・・・。じゃあ、あんなに冷たくしなくてもいいじゃない?!・・・でも、今思えば、あれも私を元気付けようとしてくれていたのかも。
あぁ、そんなことを考えると、今度は嬉し泣きしそうだ・・・。ありがとう、日吉。私が日吉を支えようと思ってたのに、これじゃ、私が支えられてるね。でも、絶対私も日吉のために頑張るからね!
・・・今読み返すと、特に何も感じませんが。以前、この話の展開をど忘れして・・・。「あれ?これって、どうなるんやっけ・・・?」と思いながら読んだら、「うわっ!!そういうことか!」ってなって、自分でニヤけてしまった記憶があります(苦笑)。
そんなわけで、ちょっと自分では気に入っている話でもあります(笑)。皆様にも、楽しんでいただけたなら幸いです。
それにしても、また第六試合の話を出してしまいました(笑)。本当、あれは感動的です。悔しくもありますが・・・。でも、あれがなければ、今の日吉くんがないわけですから、やはり大きい試合だと思います。
まぁ、覚えてない方も、たまにいらっしゃるんですけどね・・・orz(笑)
('09/11/25)